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今知りたい、嗅覚を対象としたさまざまな研究!

今知りたい、嗅覚を対象としたさまざまな研究!

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私たちが生きる上で嗅覚はひじょうに多くの役割を果たします。美味しそうな香り、気分が良くなる香りなどを嗅ぎ分けているだけではなく、生存に関わる機能が働いたり、記憶をしたり、またパートナー探しなど、生存に関わるさまざまな機能を担います。ここでは、そんな香りに焦点を当てた研究の数々を紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。

 

嗅球の外側部が好き嫌いを判断している

匂い分子を嗅ぎ取った私たちの鼻は、嗅細胞によってその分子を受取り、神経線維を通して嗅球へと到達し、最終的にどのような香りなのかを判断したり、好き嫌いやこの香り分子で起こりうる記憶などを呼び起こすなど、脳がさまざまな情報を認識、識別します。

味覚や聴覚、視覚などとは違い、唯一視床を通過しない嗅覚経路だけに、私たちは、とある香りを嗅いだ時、好き嫌いを瞬時に判断するようにできているのです。さて、その香りを要因として起こる私たちの好き嫌いの判断ですが、実はどのような神経配線様式があるのか、2000年前半まではよくわかっていませんでした。

しかし、独立行政法人理化学研究所と国立遺伝学研究所の共同研究により、2009年にその秘密の一端が明らかになりました。研究チームは、遺伝子工学的手法を利用して嗅覚神経の回路を可視化することができるゼブラフィッシュを作成。香りを嗅いだ時のゼブラフィッシュの嗅細胞から嗅球への神経配線様式、そして機能などを解析することに成功しました。

私たちのような生物は、旨味成分で知られるアミノ酸を好む傾向にありますが、ゼブラフィッシュも同様にそれらの香りを好みます。例えば、ゼブラフィッシュが泳いでいる水槽の中にアミノ酸を落し入れた場合、ゼブラフィッシュはその香りを感知してその場所へと近づきます。

しかし、研究者らはゼブラフィッシュの嗅球の外側部への神経伝達を遮断し、アミノ酸で誘因を試みますが、本来近寄るはずのこの場所へ訪れなかった、ということ発見したのです。嗅球の外側部嗅球の外側部が、私たちが香りを嗅いだ時に、『好きか、嫌いか』を判断するひとつの要因であることを、証明することができたのです。

まだまだ研究は続いていますが、嗅球の外側部が私たちの感情を左右するこということで、今後新しい発展が期待されています。

 

コーヒーの香りがストレスを抑制する可能性

以前、東邦大学の神経科学研究室が研究したのが、香りがストレスを軽減するのか、という研究です。アロマが心を癒す、ということは広く知られており、香りとストレスに関する研究報告も多数あがっています。

アロマではなくとも、コーヒーの香りで心を落ち着かせる、という方も多いようですが、実際にコーヒーの香り自体でストレス抑制効果があるかは、よくわかっていませんでした。東邦大学の増尾好則は、以前ソウル大学で働いていた時の学生に、「コーヒーの香りを嗅ぐと胃潰瘍を生じ難くなる、ぜひ調べてほしい」と、脳と香りの研究をお願いされたといいます。

そこで、増尾氏は焙煎されたコーヒーの香りを嗅いだことが無い成熟ラットを対象に、研究することにしました。対照群とストレス負荷群、コーヒーアロマ群、ストレス負荷+コーヒーアロマ群という4種類の条件でコロンビア産の焙煎コーヒーを嗅がせる試験をした後、脳を摘出して遺伝子とタンパク質の発現解析を行います。

17種類の遺伝子発現を調べた結果、コーヒーアロマ群の場合は全てのmRNA発現量、ストレス負荷+コーヒーアロマ群においても、13遺伝子という発現量に大きな変化がおこったことを確認できたのです。抗酸化・抗ストレス作用を有するタンパク質など、こういった発現変異を示したタンパク質などが発見されます。

そのほか、ストレスによる因子の発現変異をコーヒーの香りが抑制するなど、コーヒーがもっている香りが抗酸化作用、ストレスの緩和作用を持っているということが発見されたのです。コーヒーなどの香りで脳内物質の発現変化を化学的に明らかにした、ということでは世界でも珍しい研究とされ話題となります。

何気なく、日々飲んでいたコーヒーが私たちのストレスを緩和していた、という嬉しい研究です。

 

Lムスコンの香りで男性への好感度が変わる

女性にとって、男性の声のトーンは性的な意味でも重要だそうです。女性のような甲高い声の男性に比べ、低く渋い声の男性の方が魅力的に感じられる、という研究は心理学の分野でも大変有名であり、実際に無意識に女性は低く良い声の男性に心惹かれている、と言われています。

以前、ライオン株式会社が行った研究に、「男性の声から女性が受ける印象に及ぼす香りの作用研究」というものがありました。これは、香りによって男性をより魅力的に見せることはできるのか、というユニークな研究であり、男性の声を聞く女性が香り環境の違いにより、その男性への好意度が変化するのか、というものです。

実験方法ですが、ひとりの男性の声を録音した後、機械的に周波数だけ変化させて高さの異なる声を6種類作成し、それを女性被験者に評価させます。一度、香りが無い状態で被験者に声を聞かせたところ、その声のトーンなどの違いにより、女性が感じる好みの印象は変わることがわかりました。

次に、心理的、歴史的に心理的作用があるとされる香りを絞り込み、6種類に選定紙、高揚感イメージの高い「Lームスコン」という香りを漂わせ、同様の試験を行ったとのことです。

すると、男性の声の印象が女性被験者の中で変化しました。そこで、さらにフローラル、シトラス系、シトラス、ムスク調の香りを選定しても試験を行います。さまざまな研究を行った結果、フローラル・スウィート調の香りに低い声、シトラス・ムスク調の香りには高い声に爽やかさを感じさせる、という印象結果が観測されたとされています。

香りを嗅がせながら男性の声を試験させた後の気分状態も、イライラする感じなどが改善され、良い気分になったと結果で示されました。この研究は、声だけの問題ですので難しいですが、香りと声の質がマッチングすることで、より自分を魅力的に見せることができる、という可能性を示唆しています。デートなどの時には活用できるかもしれません。

 

ラベンダーが性的興奮度を高める

カナダで行われた研究で、ラベンダーが性的興奮度を高める、ということが示唆されています。アロマセラピーはもちろん、普段私たちの周囲にはラベンダーの香りを呈する商品が多く存在しているため、知っておくと役立つかもしれません。

このカナダの研究者が行った研究は、花をはじめ、フレグランスやさまざまな食品を並べて被験者に吸入してもらい、その後に性的興奮度を計ったもの。さまざまな香りを吸入したのち、生殖器の血流量を測定した結果、なんとラベンダーがもっと高い数値を示したとされた結果となったのです。

男性は4割、女性は1割生殖器内の血流量が増加していたということで、ラベンダーの香りが性的興奮を司る脳部位を刺激する、ということが示唆されました。ただし、女性は1割ということもあり、微妙です。

男性に関しては、そのほかの理由もあるかもしれませんが、何かしらラベンダーに思い入れのある被験者が集まっていおり、記憶を想起させた、という見方もできるでしょう。何はともあれ、気になる研究のひとつではあります。

 

ラベンダーの香りは脊髄神経運動ニューロンに影響を与える

またもやラベンダーの研究ですが、以前由留木裕子ら研究者たちが行った研究に、「ラベンダーの吸入が脊髄神経運動ニューロンに与える影響」というものがありました。

この研究の目的は健常者を対象に、ラベンダー精油吸入をした時、脊髄神経運動ニューロンの興奮性を抑制できるか、というものです。

濃度が0%、1 %、10%のラベンダーを被験者に2分間吸入させるなど、さまざまな研究を行った結果、濃度が10%のラベンダーを5分間吸入した場合に有為な抑制効果があらわれた、とされています。

ラベンダーを吸入することで、副交感神経が優位になり、それらが脊髄神経運動ニューロンの興奮度抑制に関わっているのではないか、ということも発見されています。ラベンダーの香りが、さまざまな効能を持つということが示唆されており、今後さまざまな研究に応用されることが期待できます。

 

人格障害と嗅覚の関係性

数年前に発表された研究で話題となったのが、重度の人格障害を持っている人は嗅覚の機能性が低下している、といものです。マッコーリー大学心理学部の研究者が研究したもので、人格障害と診断された1921歳の79人を対象に嗅覚能力検査を行い、その答えを導きだしました。

研究方法は、個々に違った匂いをペン型のスティックに入れ、それぞれを被験者に嗅がせます。香りは、16種類のさまざまな香りを持っていましたが、ほとんどの被験者がそれらを嗅ぎ分けることに困難していました。

特に、人格障害を診断するスコアで得点が高いとされていたグループは、この嗅覚能力も相関的に低かった、という結果が出たのです。この理由としては、重度の人格障害がある人、そして嗅覚障害は人間を人間たらしめている部位として知られている前頭葉に関係していると考えられています。

衝動や計画性など、社会的規範などに沿った、理性を司る眼窩前頭皮質の働きが低下していることで、人格障害を持つ人が嗅覚能力も低いのでは、といわれているのです。

しかし、これは全て関連づけることはできず、さまざまな病気で嗅覚障害が起こる、と研究者らは指摘します。ただし、眼窩前頭皮質が何らかに関連している、ということは考えられそうです。

 

まとめ

ここでは、嗅覚にまつわる研究をいくつか紹介しました。嗅覚は、まだまだ謎が多い、未開拓の分野だと研究者たちは言います。これからも、新しい発見を心待ちに、さまざまな研究を追いかけていきたいと思います。

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香りビジネス